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委員会

第3回 関西のインフラ強化を進める会 開催日:H29.12.12(火) 開催場所:ホテル プリムローズ

議事
1. 基調説明
「関西における交通ネットワーク整備とこれからの拠点整備について」
角 和夫 氏(阪急阪神ホールディングス 代表取締役会長)
2. 意見交換「京阪神地域のまちづくり」

1. 基調説明
 「関西における交通ネットワーク整備とこれからの拠点整備について」講演資料(1.91MB)

角 和夫 氏(阪急阪神ホールディングス 代表取締役会長)

ご紹介いただきました角です。まず最初に、現在、関西が取り組んでいるプロジェクトを中心に少しお話をさせていただきます。

私は阪急に入って四十数年ですが、今ほど関西が元気な時期を経験したことがありません。これまで関西に元気がなかった要因は、もちろん関西の生産力が落ちたということもありますが、1つにはインフラの問題だったように思います。中でも一番大きな問題は空港問題で、もともと神戸沖に空港をつくるという構想がありましたが、残念ながら実現しなかった。その後、関西国際空港(関空)の開港となったわけですが、関空と伊丹の間で無意味な論争が繰り広げられてきた。それに加えて、神戸にも地方空港ができてしまったということで、空港問題が関西を暗くしてきた歴史があるように思います。

しかし、2年前に関空、伊丹のコンセッションが決まりました。当時、私はオール関西でエクイティーを出すべきだと言いましたが、その後、関西の約30社が出資をして、最後の方は「何故、うちはこれだけしかエクイティーを出せないのか」というような声も出たほどです。そして、関西エアポートでの運営が始まって無事に1年以上が経過し、配当もきちんといただいています。その上に、来春には、神戸空港も含めた3空港一体運営の形がとれるようになりました。もちろん、現在は3空港それぞれの役割が決まっていますが、今後、各空港の役割、規制のあり方についても関係者でよく議論をしていただきたいと思います。

そして、空港だけではなくて、鉄道プロジェクトも道路も非常に明るい形になってきています。空港関連の鉄道プロジェクトでいうと、関空へのアクセスとなるなにわ筋連絡線や新大阪連絡線、伊丹空港へのアクセスとなる大阪空港線は、やり方によっては有望だと考えています。また、道路整備については、受益者負担のスキームも入るということで地元負担が減りますし、これから神戸空港を含めた3空港の一体運営を考えると、やはり大阪湾岸道路西伸部は非常に重要であります。2015年に井戸広域連合長を筆頭に、兵庫県、神戸市、大阪府・市と経済界が一体となって、湾岸道路西伸部と、淀川左岸線延伸部の陳情に行かれましたが、仄聞した話では、東京で陳情を受けられた方は、「関西ってこんなにまとまっているんですか」と驚かれたそうです。もともと関西は一つひとつと言われていましたが、それが見事に一致団結をして、官民挙げて陳情に行って、事業化が決まっていったということです。

まさに非常に明るい話が多くて、昨日、関西経済連合会の定例記者会見では、2017年を振り返って、漢字一字で表してくださいと言われたので、私は「関西のためになる色々なことが動き出したので、“動”」と言いました。

前置きが長くなりましたが、このあと資料に基づいて説明させていただきます。

1. 関西の現状・課題・将来像

これは、マスターカードが発表した世界の渡航者数ランキングです。絶対値はバンコクが2,147万人で1位です。残念ながら大阪は702万人で17位。ただ、伸び率は大阪が世界一ということです。

このグラフは、ビジット・ジャパンが始まって以降の訪日外国人旅行者数の推移です。2017年の訪日外国人旅行者数は、約2,800万人の達成が見込まれています。

2013年当時は、関西の訪問率が3分の1程度でしたから、250万から多くても300万人ぐらいしか大阪には来ていなかったのが、今や関西に40%以上、大阪には35%ぐらいの方が来られています。ただ、問題はそれが偏っているということです。ある調査によりますと、難波、心斎橋には昨年700万人の方がそれぞれ訪れ、梅田周辺には550万人の方が訪れた。ところが、神戸は75万人、奈良も70万人ぐらいです。京都・東山が480万人ぐらいだったと思います。来訪先が大阪、京都に集中していて、いかに広域周遊ができていないか、ということが大きな問題だと思います。

消費額については、2017年9月時点で3兆2千億円です。昨年の第4四半期が約9,000億円、一昨年も8,800億円ということを考え合わせると、今年は確実に4兆円を突破することになるでしょう。

その最大の貢献をしているのが大阪で、訪日客数の伸び率が全国では2.9倍に対して、関西では3.8倍、大阪は4.7倍となっています。

空港別の外国人入国者数は、成田のシェアが29.4%、関空は26.2%ですから、関西は成田にかなり肉薄をしてきているということであります。

さて、森記念財団の資料によれば、大阪は、居住の評価はよく、研究開発も相応の評価となっています。問題は環境や文化交流、交通アクセスなどです。この交通アクセスというのは、次のスライドでも説明しますが、空港、つまりインバウンドの交通アクセスが悪いということです。また、環境は緑がないということですね。

交通サービスの評価が低いと申し上げましたが、都市交通サービスは世界トップレベルとのことです。要するに都市部における交通のサービスは世界トップレベルで、東京都も1位ですが、国際線の旅客数や、滑走路の数など国際交通にかかる評価が非常に低く、空港から都心へのアクセスも非常に悪いということです。

2. リニア中央新幹線・北陸新幹線

次にリニアの話です。北陸新幹線の開通も想定した上で、リニアの新大阪の駅の設計や、それと並行してまちづくりなどを早期に進めていくべきというご意見が既に出ていますが、私もまさに同感です。

先般、小浜市へ行ってまいりましたが、北陸新幹線の大阪延伸を早く実現しないと、小浜・福井あたりも全て東京圏になってしまう危機感があります。もともと北陸は関西圏だったものが、どんどん東京圏に含まれてしまう。私は「東京一極集中是正」という言葉が嫌いですが、だからといって、さすがにここは早くつないでもらわないとだめじゃないでしょうか。整備新幹線の計画当時は、当然のことながらインバウンドはこんな状態ではなかったし、将来の人口減少も考えると、「北海道ができ上がるまで北陸新幹線にとりかかれない」というのは、幾ら何でも良くないと思います。ですから、これは是非とも関西を挙げて、官民が協力して、国に対して新たなスキームを要請していく必要があるのではないかと強く思います。

3. 交通インフラ整備による空港アクセス改善

次は、関西空港アクセスについてですが、皆様ご承知のように、なにわ筋線は、もともとJR、南海、そして大阪府、大阪市の4者で話が進んできましたが、新大阪へつなぐルートの関係もありますので、阪急も検討に入らないかというお話をいただきました。

我々は、地下鉄の西梅田から十三、新大阪というルートを以前の近畿地方交通審議会でお願いをしていました。当時の案では、西梅田-十三-新大阪の大半は地下という構想でした。十三は阪急の神戸線、宝塚線、京都線の結節点でありますので、十三へつなぐことは利便性の点で非常に良いのですが、ただ、地下駅になりますから、在来線に直接乗り入れることはできません。ゲージについては、大阪の地下鉄と阪急はスタンダードゲージなので同じです。南海、JRは狭軌ですから、阪急とはゲージが合いません。一方、大阪市交通局ではトンネルを小さくするために集電装置が床下にあります。そのため、阪急が地下鉄と相互直通をする場合、ゲージは同じでも集電装置が異なる新たな車両をつくる必要があるわけです。ですから、今回の件では、ゲージ幅は違いますが、狭軌用の電車を新たにつくることは何の問題もないわけです。また、地下鉄と相互乗り入れする場合は、地下鉄に検査や修繕工事等をお願いする予定でしたから、今回の件では、JRか南海に検修等をお願いすることになります。つまり、検修をお願いする先が変わるだけの話です。

さて、道路については、12月10日に無事に川西まで新名神が開通し、先ほどお聞きすると開通初日には5,000人もの方がお集まりになったということで、ものすごい期待感だなと思いました。新名神の開通によって、周辺エリアは物流拠点としての優位性が非常に高まります。

彩都地区は、UR、大阪府、阪急、関電が主たる事業者として取り組んでいます。かつて、阪急では650億円を超える特別損失を出しました。特損のうちの多くは、この中部・東部の土地の価格を評価減したもので、当時は、そのことによってかなり苦しい思いをしたのですが、この新名神が開通するということが決まりますと、このエリアはすぐに倉庫用地として売却することができました。

現在、彩都東部地区の山麓エリアでは、阪急と三菱地所が共同で開発を進めており、延べ床15万~16万m²弱で、マルチテナント型とBTS型の2つの物流施設をつくります。

これは東部地区の北側で進んでいるプロジェクトで、資生堂が工場と物流拠点をつくっていきます。

年間1億個のスキンケア製品を生産し、投資額は400億円で、新たなグローバルサプライチェーンの拠点にするということで、いわゆる国際的なeコマースを進めるということです。これも、新名神が開通したことによって、これほどの投資がなされたということで、いかにストック効果が大きいかという証明になります。

さらに、猪名川ではプロロジスが、25万m²のプロジェクトを進めるということです。

4. 鉄道結節点におけるTOD(Transit Oriented Development)開発

次に、三宮ですが、これはすでに建て替え計画を発表しております。ビルの下部はオフィスにして、上の方はインバウンド需要も期待してホテルとする予定です。

95年の阪神・淡路大震災によって、鉄道施設はなんとか持ち堪えたのですが、ビルが倒壊してしまい、それから20年以上になります。20年以上にわたって仮設だったのですが、その1つの理由は、当時は、今のような甚大な災害が起きたときに国としてサポートするスキームがなかったので、神戸市では必要に迫られて市債を大量に発行されました。それがようやく20年経って行財政改革が終わったということで、これから神戸が元気になっていくためのいろんな構想が動き出します。

その1つとして、我々も様々な形で携わらせていただきたいと考えています。

この図は神戸市が作成された三宮周辺整備の将来像イメージですが、ピンク色の部分では、歩行者を重視したまちづくりが計画されています。

ところで、神戸市営地下鉄と阪急神戸線の相互直通を検討するについては3つの案があります。1つの案は、新神戸でつなぐ。もう1つの案は三宮でつなぐ。そして、3つめは、もう少し西でつなぐという案です。ただ、我々としては三宮よりも西でつなぐと、阪急神戸三宮駅が現状のまま残ってしまうので、三宮周辺の整備が十分できないのではないかと考えています。我々が主張しているのは、六甲山と瀬戸内海に挟まれた非常に狭隘な三宮をどう活かすかという点から、現在の阪急神戸三宮駅のあたりを地下化する案で、そうなれば、広大な駅前広場ができますし、道路も拡幅でき、かつ、春日野道駅まで地下にすることになります。今、春日野道は残念ながらバリアフリー化ができていませんし、大変狭いホームで、かつ通過列車の速度も非常に速く、ホームドアもないという状況です。できる限りそれらの対策を進めていかなければなりませんが、抜本的な対策として、春日野道を地下の駅にすれば、これらの対策に加えて、さらに広大な公園用地もできるわけです。ですから、私はこの案を推奨しています。

さて、関西の強みは、24時間空港が2つあること、つまり神戸空港は海上にあるので、将来は24時間化が可能となりますから、私は「2つの24時間空港があることが関西の強みです」とよく申し上げています。冒頭にお話ししたように、関西は空港問題では大変国に対してご迷惑をかけましたが、ようやくそのとげがとれたのです。

今後、どのような形で議論が進んでいくのかわかりませんが、いずれはこの24時間空港の機能を生かした、例えばプライベートジェットでもいいし、あるいは貨物、例えば高級果物の輸出でもいいですね。ここをもっと活用するということは当然オリックス・バンシの上層部も考えていかれるでしょうから、時間はかかるかもわかりませんが、この神戸空港は必ずや将来すばらしい空港になると確信しています。となりますと、湾岸道路西伸部については、全体整備には10年かかると聞いていますので、できるだけ東側から整備を進めていただいて、六甲アイランドと神戸空港間を部分開通していただくことを期待しています。そして、そういう形で発展していきますと、今でもポートライナーの輸送力はぎりぎりですから、新神戸と神戸空港をつなぐ南北軸の強化も長期的には必要ではないかと思います。

5. 大阪湾岸臨海開発部

続いて、夢洲の話です。いよいよ万博の事前調査団が来年3月に来られるということになりました。先日、BIEの次長が来られたときも、日本の国民が万博をほんとうに期待しているかどうかが選定にあたっての非常に大きな要素になるということをおっしゃっています。パリに比べて準備は少し出遅れましたが、7月の末ぐらいから会員企業そして個人会員の方の募集を本格的に始めて、現在24万人ぐらいになりました。目標は40万人ですが、何とかBIEの事前調査団が来るまでに目標を超えていきたいという思いがありますので、ぜひとも関係者の皆様のご協力をよろしくお願いしたいと思います。

さて、私はカジノについて賛成しているわけではありませんが、おそらく東は横浜が手を挙げられることになるんでしょうが、やはり横浜と大阪が連携をしてやっていけばどうかと思います。MICEだけではなくて、国際的エンターテインメント、芸術、文化機能、それから、海外から来られたお客様に日本の伝統芸能とか、歌舞伎、文楽とか、そういうものをきちんと知っていただく、理解していただくための機能はマストだと思います。そして、ここをゲートウェイとして、さらに関西、あるいは日本国内へと、広域観光をしていただくツーリズム機能を付加されるということですので、それらを考えるとリゾート型のカジノというのはおそらくは成り立たないのではないかと思います。ぜひとも横浜と連携して、横浜、大阪で進めるべきじゃないかと思います。

ある講演で大阪市長も言われていましたが、シンガポールの賭博常習者の比率は、5%を超えていましたが、マリーナベイ・サンズとセントーサができて、いわゆる常習対策をやったところ、それが1%台に減ったということです。横浜と大阪ぐらいにカジノがあったって、ギャンブル依存症の方がさほど増えるということは考えにくい。

しかし、もう1つ言いたいのは、これも常々お話ししていることですが、セントーサはMICEの機能を全て含めて丸ごとIR事業者が負担しています。セントーサでは、ハイローラーに対して5%しか税金を取っておらず、一般の方からも15%しか税金を取っていない。その中から、赤字のコンベンション機能を賄っており、赤字を埋めた後でもおそらくかなりの利益を出しているように思います。

ですから、日本の横浜、大阪については、カジノは外資でやってもらえば良いと思いますが、その周りのMICEの施設はオールジャパンで投資をする。もちろん、カジノのあるホテル周辺に、我々、日本資本がどんどんいいホテルをつくるわけですが、カジノの収益から税金をきちっと取って、例えばハイローラーが10%、一般の方は例えば25%の税金を取って、その中から、一部は治安の問題とかギャンブル依存症対策などに使っていただいたらいいのですが、その残った税金も入れながら、日本資本でMICE機能を持つべきではないのかと思います。

以上でございます。どうもご清聴ありがとうございました。

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